大地のそばへ

2014/04/04

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週に数日、二歳の息子は保育園へ行く。園に向かう道すがら庭先にお地蔵様がちょこんと祀ってあって、二人で腰を落として手を合わせるのが決まり。日課を終えて先を歩いていると息子が付いてこない。振り返ると庭に咲く花の前に立ち止まり、また小さな手を合わせていた。頭を下げてこちらに走ってくる。そう、僕らにはもう、見えない。

─生命はみな天をさしている。が、根はどうしても地におろさねばならぬ。大地に係わりのない生命は、本当の意味で生きていない。─(日本的霊性/鈴木大拙著より一部抜粋)

僕は農業を営む家に生まれ、今はデザインを生業としている。自分の才能やその時のどうしようもない状況に悩み苦しんで、農業の世界に飛び込んだ事もある。結局自分の内にデザインへの愛情がある事を知り戻った。でも、そんな今でも自然や土に触れる事はなんだか難しく、この時代では観念的なものになりやすい。もっと大地のそばへ。こんな想いがずっと心の中に響いていた。妻とは郊外に移る想いを確認し合っていたし、あとはタイミングだけだった。そして、その時は突然やって来た。

西海市大瀬戸町雪浦。雪浦ウィークが有名な、友人たちも多く住んでいるこの地域と縁が繋がった。しかも、まちづくりの仕事や組織づくりも兼ねて。なんだかドクターコトーみたいだと思った。(ちなみにドクターコトーは見たこと無い)自分を必要としてくれる人たちと可能性に満ちた場所が僕らを待っている。行ってみよう。大地のそばへ。
雪浦に地縁のある方、家探し含めアドバイス頂けたら嬉しいです。

「地域発ヒット商品のデザイン」に掲載していただきました

2014/04/02

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3月20日に発売された「地域発ヒット商品のデザイン」に、「じゃがメル」「長崎坂道コロコロ」「沖田のなめらか和ジャム」を掲載していただきました。長崎からはDEJIMA GRAPH羽山さん達のパッケージも収録されています。デザイナーや商品開発のご担当向けという書籍なので、興味のあられる方は是非に。長崎でデザインのご依頼に悩んでいる方へのきっかけになると良いなと。

地域発ヒット商品のデザイン/PIE BOOKS/ 20.8×15.4cm/384ページ

伝えなきゃいけなかった

2014/03/31

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単純に自分の中での気持ちの持ちようだと思うのだけど、言葉をつらつらと書けなくなってしまい(書かなくなってしまい)約3年。今日のさっきのさっきまで「書けない」と思っていたのだけど、えいやっとまた葉と根(このブログです)を始めます。はい。変に完璧主義の悪い癖が出てました。今日と明日で言う事が違うかもしれませんが、日々思考も変わるということでご了承を。
さて、という訳で(なんの訳だか)文体もまだ定まりませんが、「書かない」とか「書けない」とか言って殻に閉じ籠もってしまったのは、実はとても傲慢だったと、先日妻のヨガスタジオに来てくだすった才田春光さんともお話しして気付かされた訳でして。こんな会話がありました。「わたし達の服をひとつとって見ても、そのボタン、その生地、その柄、その色、その縫製、そのデザイン、皆知らない誰か一人一人のアイデア(考え)の積み重ね。それを出し惜しみせずに伝えあったからこそ、今あなたが着ている服になっている」と。
みんながみんなそれぞれの違う道を歩んでいってて、体験を通して気づいたり、日々感じたりするもの、発見したものやこと。それは皆の為にも、そして自分の為にも、「伝えなきゃいけなかったんだ」。という事に、周囲の気掛けてくれる人達のお陰でようやく遅まきながら気づいた今夜。こうしてシンデレラのごとく、0時を針が指す前に(3月中ってことね!)書かんばいかん!とタイピングしている古賀正裕デザインなのです。伝えなきゃいけなかった。ありがとう。も、ごめんなさい。も、でも大好きです。も。
※写真は諏訪神社横の公園内に佇む池原かわかの石碑と2月の梅。江戸後期の本木昌三の活版活字の母型製作に置いて、ひらがな活字の元となる種字を書いた国学者や歌人とも説がある長崎の隠れた偉人です。

紹介してもらいました。

2014/02/14

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前述の対馬の調査はとても有意義だったのですが、気が張り詰めていたのか、戻ってきたら風邪気味でダウン…。妻からはほどほどに。とお叱りを受けました。苦笑 写真は対馬の浅藻(あざも)地区。天道法師のお墓と言われている八丁郭もある聖地です。対馬は初雪もあって寒かったけど自然が美しかったなぁ。さて、以下紹介です。

◉長崎を中心にアーティストやクリエーターの方々のインタビューを集めている「Siteまつを」さんに取材していただきました。主にパッケージデザインの話を主題に5分ほどの音源です。興味のある方はサイト内で聴けますので是非。

◉新刊「地域発ヒット商品のデザイン/PIEBOOKS」(3月発売予定)に「じゃがメル」、「長崎坂道コロコロ」、「沖田のなめらか和ジャム」を掲載させてもらいます。また追ってご紹介を。

対馬へ

2014/02/14

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2月9日から3日間、対馬南部・豆酘(つつ)地区にて1000年以上続いている「赤米神事」の調査へと行ってきました。日本のお米の原種であり、昨年の宮中献穀米にも選ばれた「赤米」です。民間伝承の形でこれだけの時間息づいている事も貴重なのですが、自然信仰(穀物信仰)と神仏とが一体となり、島という閉鎖性も影響してか、神仏分離も起こらず古き日本の信仰の形を残していました。同地区の多久頭魂(たくずたま)神社には大陸から渡ってきた梵鐘があったり、神主様の呼び名にも「宮僧(くぞう)」と「僧」が付いていたり、日本人の包み込む寛容な精神性を感じさせます。独特なイントネーションの豆酘弁や、豆酘美人と称される人々の出自の由来には、深く大陸との交流が関わっているとの話も聞けて、長崎の面白さをあらためて発見しました。

この神事に横たわる「かつて自然(神)と人と食は一体であった」という事実は、僕たちが忘れてしまっていた「大切にする心」をもう一度思い出させてくれそうです。

向かう

2014/01/27

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─彼らは「向かう」んです。例えば、立ち上がった子どもは「あそこにお父さんがいる」ということで、ただ、お父さんに向かっていくだけなんです。宇宙遊泳のような感じですね。それがだんだん、向かう所に歩けるような力が出てくる。その時の、歩く力の内在した能力としては「向かう」ということなんです。─

前述の抜粋は、沖正雄さんというドイツ在住のシュタイナー教育に関わる方の講演記録の一部。とても惹かれた箇所だったので、冊子を読み終えてからも自分の中で言葉が残ったまま。反芻していると、ちょっとずつ気づきが生まれてきた。それは「働くこと」も同じだなぁという事。例えば「人を助けたい」という気持ちのあらわれが、ある人は料理を作ることかもしれないし、別の人は髪を切ることかもしれない。でも、出発点は「助けたい」というその一点。外の見え方が違うだけ。内在しているものこそが大切で、目先はその時々で変わってもいいんじゃないだろうか。料理人が美容師になってもいいし、デザイナーが農家になっても、きっといい。僕の仕事の大部分は「相手の話を聞く」という時間で、端から見るとデザインしている様にはまるで映らないかもしれない。だけどその時間こそ、僕なりの「向かう」のあわられで、その結果、デザインという形でこの世に出てきている。そんな内と外の関係。面白い。「外見は一番外側にあらわれた内側」とかいう誰かの言葉。言い得て妙ですね。

写真は息子と公園にて。どんどん成長する彼はいつも全力。興味のあるものへまっしぐら。走り負けないようにしないと…。そして、今日は僕の誕生日だったので、妻と郊外へ出向いて昼間から祝杯。晩には父から不器用なバースデーコールのサプライズも。笑 今を共に過ごし、明日へと向かってくれる家族や大切な友人たちに心より感謝を。

視点の高さ

2014/01/13

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近所の山に登るのがつかの間の息抜きとリフレッシュになって好きだ。長崎市の市章は五芒星がモチーフなのだが、なぜこの形なんだろう?とずっと疑問だった。その理由が明治時代の世界的な金星観測調査の地であった為と知人から教えてもらったのは最近(でも長崎市の公式説明は違う)、その金星観測碑跡があるのも近所の山の上だった(ちなみにピラミッドもある)。何度か息子を抱えて登ったりしていたが、今日一人の時間が出来たのでゆっくりと普段歩かないルートから登った。途中の段々畑から長崎の街並みを見下ろしていると、自分がぐわんと広がった感覚になって、なんだか空の上から見つめているようだった。鳶が目の前を横切って弧を描く。彼らにとってはそこは空で、僕にとっては畑の中を縫う細い階段の鼻先。斜面の持つアングルにクラクラしながら石段に腰掛け息を吐いた。家々の中ではそれぞれの家族が、掃除をしたり食事をしたり子どもとうたを歌ったり、めいめいの時間を生きている。それが何千戸と連なって眼下に広がっているのだ。神様みたいな気持ちになる。そして思った。考える範囲というのも同じ事かもしれないな、と。例えば家の中の事は家と自分の視線がフラットだから考える事が出来ている。だけど空の上の視点になったら自分の家なんて小さすぎる。そんな時に自分の家の台所の事なんてどうでもいい。王様や殿様だって城のてっぺんから自分の国が見渡せられたから、全体の事を考えられたんじゃないのかなぁ。もっと多くの人が視点を高く持てたら、争いや問題ってずっと少なくなるはず。そんな、「物理的な視点が考える範囲を決めるんじゃなかろうか理論」。想像力の翼、って上手いことばですね。

さぁ行こう。

2014/01/10

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あけましておめでとうございます。いつも葉と根(これブログです一応)に来て頂きありがとうございます。去年より更新が多くなりますので良ければお付き合いください。(去年は何だったんだろう、いやその前の年もか、いやその前の前も…あぁホームページが出来て良かったなぁ)ということで2014年初頭に当たり、想いやこれからの事をあれこれ箇条書きです◎農的な仕事及びライフスタイルが一歩進みそう◎離島へ行くことになった◎メディア対応が増えそう◎仕事場のスペース的な問題◎関連して引越し問題(昨年より持ち越し中)◎ランニングかウォーキングか◎フットサルがようやく再開◎ギター教室を薦められるが本当はピアノが好き(勿論弾けない)◎カメラの事もうちょっとちゃんと知ろうと思う◎アナスタシアアミ小さな宇宙人を連続して読破し意識がまた変化◎始めに言葉ありきということ◎身近な人達の凄さをあらためて実感◎やっぱり筆無精だった ※写真は小浜から千々石へと抜ける緑のトンネル脇からの一枚。さぁ行こう。

こういう時間

2013/12/31

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年末は実家のミカン収穫の手伝いへ。前日から今年最初の雪が降ったりしたけど、強引に決行。ミカン山に登るとまだちらほら雪景色。たまに晴れたり、また降ったりの繰り返しの中、総勢6名でただただパチパチとミカンを採っていると、いつの間にかぼーっと無心状態になっていて、普段のデスクワークから身も心もすっかり逃避出来るのが良い。親戚や兄弟と世間話したり、焚き火にあたったり、昼間から無礼講でお酒飲んだり(苦笑)、前記事の印刷作業のつづきみたいな、皆でひとつに向かっての作業。フリーで仕事しているとこういう時間はあまり無い。高校生だった頃、東京に就職するか長崎に残るかという選択をひとり抱えこんでいた夏の夜に、畑から見た打ち上げ花火で、「残ろう」と決めたことがあった。あの夜も父親と近所のおじちゃん達とで、トラックの荷台の上でカレー食べつつお酒を飲みながら(僕もビールぐらい飲んでたかな)、花火大会を見物していた。なんだかこういう時間こそ大切なんじゃないか、とか17才なりに感じたのが理由だった訳で。そしてその選択というか直感は今でも間違ってなかったように思う。どうぞ来年も皆様にとって良い年になりますように。

ナガサキリンネの新聞

2013/12/27

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第3回が2014年11月5日(水)〜9(日)の開催に決定したナガサキリンネ。今までと同じ長崎県美術館と国指定史跡「出島」での開催です。今春開催した第2回ナガサキリンネの報告を兼ねた新聞「ナガサキリンネプレス」が本日刷り上がり、県内外各所へ配布する準備へと移りました。右上の開催決定!印は、実行委員メンバーによる活版印刷。だるまの目の様に、一枚一枚想いを込めてプレスしました。がしゃんがしゃんと活版印刷機が心地良いリズムで鳴り響き、仲間たち同士の語らいも弾む午後。こういう時間こそ、きっといつか想い出すんだろうなぁ。