フィルムへの誘惑

2019/02/06

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3年前のオランダ・アムステルダムで、はっきりと僕が自覚したことがあった。泊まっていたホテルの部屋でひらめいたあるアイデアをおさめようと、一眼レフのカメラを構え息をひそめ記録するその数十秒のあいだのことだった。ファインダーをのぞきこむ僕の胸がはげしく高鳴り続け、自分でもびっくりした。

ジョン・レノンとオノヨーコが裸で寄りそい、記者たちの質問にベッド上でこたえるというインスタレーションアートがあったのだが、その舞台がアムステルダムのホテルであったという記憶もシンクロしたりで、家族と離れて海外で仕事を行うストレスとあいまって、愛やパートナーシップをあらわすアイデアに過敏に反応したのだと思う。まるでヨーコと精神がシンクロしたかのような気持ちになったのだ。

「実写で映像をつくりたい」

フィルムへの誘惑を僕はこのとき強く意識した。以前から短編映像の制作は手がけていたが、帰国後はより意識的に習作をつくっては自分のなかに経験を蓄え、少しずつ実写のほうへと近づいていった。

2018年夏、縁あって鹿児島の切子師 鮫島悦夫さんから薩摩切子の映像をつくってもらいたいと電話がかかってきた。制作過程は薩摩びーどろ工芸さんのブログ記事にもなっています。撮影風景の様子や、初めてづくしの新作発表会の様子も、読み返すとなんだかもう懐かしい。公開開始したプロモーション映像はこちらのYouTubeから。

映像って「時間のデザイン」だと僕は思うし、
数学的な思考やリズムとセットになるところがまた面白い。

(つづく)